皆様が塗料選びで重視することは、耐久性や汚れにくさといった「上塗り」の塗料だと思います。
しかし、上塗り塗料の選定に重きを置きすぎ、見落としてしまいがちなのが下塗り塗料です。
上塗り塗料に多種多様な物が存在するように、下塗り塗料にも多種多様な物が存在します。
結論から言えば、塗装工事において良し悪しを左右し、未来の満足いく結果は下塗り塗料次第です。
仮に、下塗り塗料を使用しなければ不具合を発生させる要因となり、結果として塗装工事が失敗に終わってしまう可能性が高いといえます。
下塗り塗料の役割
1.密着性
上塗り塗料には接着力が弱く、そのまま外壁に塗布してもすぐに剥がれてしまいます。
そこで、重要になるのが下塗り塗料です。外壁と上塗り塗料を密着させる接着剤のような役割を果たすことで、上塗り塗料の密着性が高まり、安易に剝がれてしまうといったリスクを防ぎます。
2.吸い込み止め
日々の雨ざらしや日ざらしによって、外壁は経年劣化をしてしまいます。
傷んでしまった外壁の表面は、雨水を吸い込むと同様に、塗料を吸い込んでしまうので上塗り塗料の機能を十分に発揮させ長持ちさせるために必要な膜厚をつけることができなくなります。
その結果、塗装面が色や艶のムラが発生してしまい、仕上がりの見栄えが悪くなるばかりではなく、膜厚が薄い箇所は不具合が発生してしまうリスクが高まります。
そこで、重要になるのが下塗り塗料です。傷んだ外壁に上塗り塗料が吸い込まれるのを抑える役割を果たすことで、綺麗な仕上がりにしつつ、不具合が発生してしまうといったリスクを防ぎます。
3.隠ぺい性
隠ぺい性といっても二つの隠ぺい性があります。
一つは、傷んで荒れてしまった外壁には、大中小様々なひび割れや欠損があります。
細かいひび割れの上にそのまま上塗り塗料を塗布しても、ひび割れの痕が消えることはなく綺麗に仕上がりません。
そこで、重要になるのが下塗り塗料です。ひび割れに浸透させ隙間を埋めることで、綺麗な外壁表面に仕上がります。
もう一つは、既存の外壁色を濃い色から淡い色に塗り替える場合の隠ぺい性です。もとの下地の色が透けてしまい選んだ色通りにならない可能性があります。
そこで、重要になるのが下塗り塗料です。白色の下塗り塗料を使用し、既存の外壁色を覆い隠すことで、上塗り塗料の発色も良くなり、より美しく綺麗に仕上がります。
4.機能向上
上塗り塗料と同様、様々な機能を持つ下塗り塗料が存在します。
代表的なものは外壁表面の傷みが激しい際に使用する『素地表面を固める機能』、カビの繁殖を抑える『防カビ機能』、サビの発生や腐食を抑える『防サビ機能』や遮熱塗料の機能を補助する『遮熱補助機能』、ひび割れを抑える『追従機能』などがあります。
きちんとした下塗り塗料を組み合わせることで効果を底上げさせることが可能です。
まとめ
塗布を行う基材の種類や様々な劣化の内容、前回使用した塗料に応じて相性が良い適した下塗り塗料を選ぶことが重要です。
また、選んだ下塗り塗料によっては、傷みや吸い込みが激しい箇所は1回塗布ではなく、2回塗布などの工夫を行う必要があります。
特にご注意いただきたいのは、昨今の窯業系サイディングの中には、汚れにくい特殊なコーティングが施されている外壁材が存在します。
このような外壁材は塗装業界で『難付着サイディング』と呼ばれています。適した下塗り塗料の選定を行わない限り不具合を起こしてしまうリスクが伴います。
下塗り塗料の選定は、基本的には塗装業者や営業担当者がお住まいの状態に合わせて行ってくれます。
しかし、なかには乏しい知識の方が存在するのも事実です。
失敗しない塗装工事のためにも、消費者であるお客様自身も少しでも多く最低限の情報を知り理解することが大切です。